仙台の事件検証

仙台で発生した筋弛緩剤点滴事件を考える

仙台市泉区の北陵クリニック(半田郁子院長)を舞台にした筋弛緩(しかん)剤点滴事件は11日の初公判まで、あと1週間に迫った。事件で1件の殺人罪と4件の殺人未遂罪に問われている元クリニック職員の准看護士守大助被告(30)は、ことし1月6日に逮捕された直後、いったん犯行を自供したが、その後は一転して無実を主張し続けている。患者の保存血液などから検出したとされる筋弛緩剤マスキュラックスを有力な証拠として立証を目指す検察側に対し、弁護側は鑑定結果や動機、自白の信用性まで広範に反論する見通しだ。医療従事者による特異な「薬物犯罪」として、全国に衝撃を与えた筋弛緩剤点滴事件の公判は、検察側と弁護側の全面対決が避けられない。初公判を前に、事件の争点や経過、関係者の今の思いなどを考えてみる。

弁護側が異例の「えん罪」の冒頭陳述⇒弁護団は初公判としては異例の冒頭陳述を行い、「患者に筋弛緩剤が投与された事実は存在しない。被害者の血液の鑑定書はねつ造の疑いがある」「5人の被害者の容体急変は、病変か医療過誤だった」と主張、捜査についても、「被害者の血液や尿から検出された筋弛緩剤の濃度は不自然で、警察の鑑定には、ねつ造の痕跡がある」「自白は刑事らの強要」と批判。院長が患者の急変に十分対応できなかったとし、「急変時に居合わせることの多かった守被告を犯人とする薬物投与事件という構図を思いついた」と述べた。

また、罪状認否で陳述台に立った守被告は、背筋を伸ばし、「無実」を主張した後、「毎日必ず、『お前は人を殺したんだ』とどなられた」などと警察批判を展開、「被告人席に座らされていること自体、とんでもない間違い。1日も早く……」と述べ、(涙を浮かべながら)「無実と分かってもらい、私を信じて待っていてくれる家族や彼女の所へ帰りたい」と訴えた。

 

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